実際にあった建築詐欺の話

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弥生町・みかづき工房にて

この話は事実である。なぜなら、実際に私が体験した話だからだ。体験したといっても、私が被害者でも、加害者でもない中立な立場での体験だ。

舞台は札幌だった。私は不動産仲介業務を行っており、業務で土地の売却を頼まれていた。売主は近郊で農業を営んでいる年配者だった。自分が持っていた畑が土地区画整理事業の対象となり、畑に使えないのなら売却してしまおうという理由だった。
売主は、農家特有の優しさを持っている方で、仕事で農場に訪れる度に採れた野菜や果物を私にくれた。私はいつもその恩恵にあずかっていた。

その頼まれた土地に買いたいという客が現れた。札幌市内のA不動産会社が買主を見つけてくれたのだった。買主は30代前半の若い方だった。若いゆえに資金も充分ではなく、多少の金額値引交渉が入ったが、売主さんも自分の息子のような若者だからと快く値引に応じてくれた。
買主の住宅ローンの事前審査にも承認が下り、順調に契約へ至った。そこまでは普通の取引だった。

だが、それから私が経験した取引の中で、最も驚いた展開を見せることになった。
その前に、住宅ローンの仕組みがわからない方に簡単に説明しよう。土地建物の総体費用を借入する場合、銀行で実際に融資金が出されるのは、建物が完成してからなのである。ところが、建物は土地が本人の名義にならないと建てることが通常できない。そのためには、買主は土地の代金を全額支払わなければならないのだ。ローンの金が出ないのに土地代金を用意しなければならない。無理な話だ。
そこで、通常行われるのが、つなぎ融資という土地代を立替えて別の金融機関から一時的に借りるという方法と、建築会社が土地代を立替えて支払うという2つの方法だ。後者の場合、小さな建築会社であれば銀行から資金融資を受けて支払うことがある。

買主の建築の請負はB建築という個人経営のものだった。そして、土地代金の決済は後者、つまり建築側が支払うということになっていた。
一定の手続が終了し、土地代金の決済日がになった。土地の仲介業者である私は、決済場所や司法書士等全ての準備を整え、売主買主を待つことになっていた。ところが、予定時間の1時間前になって、A不動産会社の営業マンから、B建築が金を調達できなかったと私に連絡してきた。つまり、土地代金は用意できなかったということだ。前代未聞のことである。何か不都合が生じることは、不動産取引にはたまにあることだ。だが、決済の直前にそれが発覚することはまずない。

私は関係者に連絡を取ろうとしたが、もう既に皆指定された場所に向かっていたため連絡がつかず、結局B建築以外の人間が全て揃った中で、事態の報告をしなければならなくなった。全員あきれたり驚いたりして、その場はやり場のない重い空気に包まれてしまった。
しかし、困ったねでは当然済まされない。A不動産の営業マンは、完全にどう対処していいのかわからなくなっていた。仕方なく私はB建築の者に電話をし、どうするつもりなのか問い質した。するとB建築は3週間後までには必ず用意するとの返事をしてきた。もう完全に信用できなくなっていたが、売主と買主の気を静めるために、いちおうその日を決済日として改めて設定することになった。

もうA不動産は対応能力を持っていなかった。私も初めてのことだが、必死になって考えた。B建築に何度か電話し、借入予定の銀行はどこなのか、担当者は誰なのか尋ねた。そして、その銀行の担当者に直接会いことの真偽を確認したところ、確かに相談には来たが、実際の融資は不可能だったので断ったとのことだった。

完全に作り話にだった。私が入手した事実をB建築に話すと、そこではない、と言葉を翻した。ある金融機関から(銀行ではなく)の借入を申し込んでいるとの答が帰って来た。その金融機関はどこなのかと訪ねてみたが、今度は実名を挙げなかった。
事態は収拾不能になってきた。そこで私はA不動産に、予定日に決済ができなかったら買主に対して損害賠償を請求する旨伝えた。ことの経緯からいって、買主は悪くないのだが、契約上では買主の責任となるため、賠償請求先は買主となってしまうのだ。A不動産の営業マンはパニックになっていて何も出来なくなってしまった。仕方なく引き続き私はB建築に連絡し続けたが、そのうち連絡が取れなくなってしまった。

そこで私は損害賠償請求を出そうかと売主と相談した。本当はそんなことをしたくはなかった。買主は建築の契約金として50万円をB建築に支払っていて、ほとんど金が残っていなかったのを知っていたからだ。だが、それでも業務として、何らかの決着をつけないわけにはいかなかった。
だが売主は、息子のような若者を苦しめたくはない、可哀想だと解決策を探った。そんな折、買主が別の建築会社を見つけたとの連絡が入った。そこはそれなりに業務をきちんと行っている会社だった。私はそのC建築会社の担当者と連絡を取り、確認の上、決済をあと1ヶ月延ばすことを売主に提案した。売主は承諾し、ただしそれが最後のチャンスとし、不調に終わったら本当に損害賠償請求する旨の確約書を買主と交わした。

最終的にc建築会社が何とか期日を合せて金を用意し、予定より3ヶ月遅れて何とか土地代金の支払いは終了し、買主は建物を建築することができた。だが、B建築に支払った契約金50万円は戻ってこなかった。それをA不動産の担当者は自費で買主に戻した。
建物が完成し、買主が新居に引っ越してから、ある書類に買主の署名捺印をもらいに訪れたことがあった。その書類は取り決めごと関係のものではなく、単なる事務手続上の損にも徳にもならないものだったにも拘らず、買主は署名捺印を拒否した。もう書類にはサインをしたくないと拒んだのだ。気持ちはよくわかった。それでも、主旨の説明や感情の高ぶりを鎮めて何とかサインしてもらった。その頃、B建築は別の詐欺事件で逮捕され収監されたとの噂を聞いた。

これは本当に私が体験した実話である。

*もちろんのことではあるが、冒頭の写真と本文は全く関係がありません。念のために。



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by jhm-in-hakodate | 2011-01-29 23:20 | 社会・経済について | Trackback | Comments(0)
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