雪掻きの想い出

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入舟漁港。

今日、ある場所のある場所の雪掻きをした。仕事関係の場所だ。休みが明けてから初めて雪掻きをする場所だった。
正月に比較的穏やかな天候が続いたせいか、表面の雪はすぐ掻けたが、その下に氷が顔を出した。そのその場所はお客様が歩く所だった。私はとっさにご年配者が歩いて転んだらたいへんだと、氷割りを始めた。だが、二つの問題があった。ひとつは、氷を割る道具が金属のスコップしかなかったこと。もうひとつは、決して氷の下を傷めてはいけない場所であるということだった。

そのため、私は金属スコップの側面で地道に、割るのではなく、叩いて氷を薄くする方向で作業を始めた。氷の下が多少傷付いてもいいのであれば、スコップの鉾先を使って氷を突き刺し、割れ目ができた所から地肌が見れるように、氷の下を掬い上げるようにして割っていけば、比較的短時間である程度の成果が得られるのだが、それは許されなかった。

結局、2時間もかけてやり、やっと滑らずに通れる道筋を作った。この間に、昔栄町に住んでいた時のことを想い出した。
その頃は単身者世帯が多いアパートに住んでいた。そのため、部屋は狭かった。だが、部屋から見える眺望は最高だった。角部屋だったおかげで、南側の窓からは函館山が見えた。西側の窓からは道路中央の緑地帯の木々と鳥が目に映った。夏には木々の上に花火が舞い上がった。

ところが、冬になると、単身者世帯のアパートの欠点に悩まされることが多くなった。それは、誰もが雪掻きをしないことだった。そのため、アパート前の歩道は他の家の前に比べて、特段の雪の盛り上がり方をしていた。つまり、通行人はアパートに差し掛かると、小さな雪の峠越えをしなければならなかったのだった。
その惨憺たる状況に、私は、仕事が休みの日は時間をたっぷりかけて雪掻きをやった。その日も、たっぷり雪掻きをして、これだけやったのだから、もういいだろうと、自己満足に浸っていた。その時、私の部屋の下の階に一人で住んでいる70歳くらいのおばあちゃんがアパートから出て来た。すると、雪から顔を出した氷に滑って手を付いてしまったのだ。幸い転倒までには至らなかったが、そのシーンに私はヒヤッとした。そう、高齢者はちょっとした転倒でも簡単に骨折をするからだ。
一人暮らしのおばあちゃんが骨折したら、生活に困るだろう。

そのおばあちゃんとは日常的な会話をしたことがなかった。顔を合わせた時に挨拶をする程度だった。挨拶の時、おばあちゃんは品の良さそうな笑顔で応えてくれた。
来客は少ないようであったし、人知れずひっそりと静かに暮していた。自分の子供と思えるような来客も見たことがなかった。
どうして、ここで一人でいるのだろうか?
結局、自分が引っ越すまでそれを知ることができるよう会話をすることはなかった。傍から見ると、本当に孤独に思えた。だからこそ、おばあちゃんに怪我をしてはもらいたくなかった。

その時から、私は雪掻きだけではなく、氷割りもするようになった。これは雪掻きよりも手間のかかる作業だ。毎日作業ができるわけではなかったので、休日の一日で終わりそうもなかったら、せめて峠の傾斜をなだらかにするまでは頑張ってやった。

それは、誰のためでもなかった。ただ、おばあちゃんに怪我をして欲しくなかっただけだった。他の住人はどうでもよかった。だいたい、アパートの中で雪掻きをしていたのは私だけだった。他の単身者がやったのを見たのは(あるいは、やっただろうと思われるような雪の減り方があったのは)1回あったかどうかだった。
アパートの住人は、だいたいが若い人たちだったので、まぁそれも仕方ない、自分が困るだけだ(もちろん、私も困るが)と諦めるしかない。だが、高齢者を巻き添えにしてはいけない。その思いだけで、氷割りは春近くまで何度も行った。

アパートの住人の一部からは、いつもありがとう、助かります、とお礼を言われることがたまにあった。私は愛想笑いをして応えたが、内心「あんたのためではないよ」と常に思っていた。困るのであれば自分もやれ、と思っていた。私がやったのは、おばあちゃんのためだけだった。
みんながその思いで代わる代わるやれば、何ともないことだ。そして、みんなが喜ぶことができる。それが平和というものではないか?

私は特別なことをしたとは思っていない。今もその時も。だが、世の中はそうでもないのだ。そのアパートで、雪掻きをしない住人のひとりは、結局結婚と同時に家を建てて引っ越して行った。私が今住んでいるアパートの隣の部屋に住んでいた家族も、雪掻きをほとんどしなかったが、何ヶ月前に家を建てて引っ越して行った。

結局、世の中ってそんなものだ。だから、世の中はややこしくなってくるのだと思う。


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by jhm-in-hakodate | 2012-01-07 23:21 | その他雑感 | Trackback | Comments(1)
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Commented by 陽気妃 at 2012-01-08 09:44 x
今は雪掻きの必要無い地域に住んでいますが、一年に一度くらい積もることもあります。家の前とその周辺道路、早めにほうきで掃くと速く溶けるので(「雪掻き」は無いので)やっています。函館で独り暮らしの父は、「大変だけど運動になるから」がんばって雪掻きしています。心配なので、こちらに呼んでますが、なかなかうんとは言いません。
jhmさん、雪掻きお疲れ様です。でも、善いことは巡りめぐってきっとご自分にも還ってきますよ。(^-^)