函館古建築物地図(入舟町後記)

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弁天町の時もそうであったが、古建築物の撮影時にはそれとは関係のない写真もついでに撮っていた。
それらの写真を交えて、入舟町について少し話してみたい。

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入舟町の山背泊で撮影をしていると、道路上で遊んでいた小さな女の子が話しかけて来た。
「ねぇ、写真撮って」私は近くにいた母親に目で撮ってもいいかどうかシグナルを送った。お母さんはダメだとは言わなかったので、子供の希望通りに撮ってあげた。すると女の子は喜び、走って向こう側に行きポーズをとった。ポーズと言っても子供の自然におどけた可愛らしいものだった。

一緒に遊んでいた男の子は少しはにかんで、レンズの前に立とうとはしなかったが、女の子が誘い二人での写真も何枚か撮った。その二人のしぐさは、昔からの「子供」のものだった。私たちが容易に想像する昔からの無邪気な子供そのものだった。

そう、入舟町には、人を疑わない昔からの人が住んでいたのだ。都市部では決して接することのない、昔の「普通」に出会えた。そんな懐かしいものが建物にもあった。

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外付けのトイレだ。トイレというより便所と呼んだ方がしっくりくる、昔の函館の長屋などに普通にあった共同の便所だ。

汚い話で恐縮だが、昔の函館の長屋にはこのような外付けの共同便所があった。だから、用を足すときはわざわざ玄関を出なければならなかった。当然汲み取り式だ。バキュームカーがやって来て、きれいに吸い取っても、長屋の人間が利用すればあっという間にいっぱいになる。便器にしゃがむ時に、溜まった排泄物が接近しているのを見るのが少し嫌だった。
そんなことを思い出した。

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想い出と言えば、入舟漁港にに面して建っていたこの建物が昨年解体されていた。この家は私が小学2年生の時に一時期住んでいたものだ。そして、故木下順一氏が著書「函館 街並み今・昔」で「いかぶすまの家」として紹介されたものだ。

はたして、私が住んでいた頃の時点で築何十年経っていたのかは不明だが、これも見事に古建築物であった。当時、既に一階は使用されていなかった(と記憶している)が、それ以前は獲れたイカを一階の作業場で干していたのではないかと思う。

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入舟町は漁師町だ。漁師は派手な色を好む。それは大漁旗に派手な色がたくさん配色されており、見慣れているせいかもしれないが、建物の塗装にもその流れを見ることがある。それはそれでひとつの特徴だ。
そのセンスがいいかどうかは見る側の問題だが、ともかく、そんな昔の庶民の普通がたくさん残されているのが入舟町だ。

そして、入舟町はとても素敵なプレゼントを与えてくれる。夕景だ。

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この絶妙な雰囲気の風景は入舟町でなければ見ることができない。この写真は私のPCの壁紙にしているほど気に入っている。私は、函館で最もきれいな夕景を見ることができる場所は、と訊かれたら、迷わず入舟漁港だと答えるだろう。外人墓地でもベイエリアでも中央埠頭でもない。ここが一番美しい。

入舟町の海岸沿いに住んでいる人は、この美しい夕景とともに生きている。




このシリーズでご紹介する建物は以下の基準で選択・掲載しています。

1.新築年は戦前以前と思われるものとします。ただし、全てを調査するのは困難ですので、基本的には建築様式などで筆者が主観的に判断します。実際の建築年と異なっていたとしても一切の責任は負いません。
2.外壁・屋根などが現代のものに改装されていても、建築様式が前記に当てはまると判断した建物は掲載します。ただし、外観に建築当時の痕跡が無く、明らかに現代のものに改装されているものは除きます。
3.基本的には1棟1枚の写真としますが、建物の規模が大きい場合には2枚掲載する場合があります。また、長屋などはまとめて何戸かの写真を掲載する場合があります。
4.ご覧になった方に先入観を持っていただきたくないため、その建物の肩書(景観形成指定建築物、伝統的建築物、あるいは建物にまつわる物語など)は一切添付いたしません。どうかあなたの感性だけでご覧になってください。
5.写真の過度な編集は行わず、実物に近い状態の写真を掲載します。ただし、筆者の感性でモノクロにした方がいいと判断した場合は、自分に従います。
6.基本的には○○町○番を一括りとして掲載します。枝番(○号)までは掲載しませんので、気なった方は地図を片手に現地を歩いてみてください。
7.本ブログ右側にある「カテゴリー」をクリックしていただきますと、このシリーズだけをご覧になることができます。また、「タグ」ではさらに各町だけに絞ってご覧になることができます。





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by jhm-in-hakodate | 2013-06-20 01:36 | 函館古建築物地図 | Trackback | Comments(0)