賃貸物件と街並(余剰金の行方)

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歴史的な建物の間にある空地。今ここに5階建の賃貸マンションが建築中である。

賃貸アパート・マンションは供給過剰である。このことは、いつも新聞を隅から隅まで読んでいる人ならわかるはずだ。なぜこのようなことが起こるのか。その理由は大きく分けて二つある。
まず一つ目は、いくら不景気と言っても金はあるところにはあるからだ。何しろ貯蓄残高世界一の日本である。その運用先を探している人間がごまんといる。その人間が、『リスクが少なく収益があがって資産も残せるもの』として賃貸経営に乗り出すから。しかし、これは大昔の考え方である。このことについては後述する。
二つ目は、そういう者が作った新しい賃貸物件に入居者が入ると、自動的に古い物件から入居者が減り、おまけに賃借人の主流を占める若年層の人口が減っているから。
つまり、年々賃貸物件の総数は増加するが、それを借りる人間が減っているため、結果として供給過剰となるのである。

これは特別な知識や分析力が無くとも、街を見渡して新聞で時折発表される人口関係の記事を読むとだれでも推測できることだ。では、なぜそれでも新しい賃貸物件が建つのか?それは、数字に囚われてしまった「自分だけは失敗はしない」と思った人間がより金を増やしたくて建てていることが多い。

賃貸運営に欠かせない数字に利回りというものがある。これは、投資した金に対してどれだけ手元に余剰金が入ってくるかという数字のことだ。AP・MSの場合、土地建物と諸費用を合計した金額、これが投資額だ。それに対して1年間の総賃料収入の割合が利回りとなる。例えば総額5000万円で取得したAPで年間収入600万円あったとしたら、利回りは12%になる。定期預金しても年1%にも満たない金利と比較するととんでもない差だ。ところがそうはいかないのが賃貸経営だ。

この続きは次回とするが、どうしてこんな面倒くさい話を始めたかと言うと、これが街並に関係してくるからだ。新しいものが作られると、同時に古いものが残る。残ったものが再利用されればまだマシだが、それができなければただ廃れるだけであり、街並に影響を与えるだけだからだ。
by jhm-in-hakodate | 2010-02-08 23:34 | 社会・経済について | Trackback | Comments(0)