意外と知らない宅建業法違反(2)

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大手町ハウス(旧浅野セメント函館営業所/村木甚三郎施工/大正7年頃築)

前回は重要事項説明をきちんとするかどうかという点で、業法違反かどうかについて述べました。本日は、たとえ重要事項説明を行ったとしても、その内容が曖昧であったり素人の方が判断しずらい項目に関してお話ししましょう。

といっても、あまりにも専門的な話をしても、不動産の基礎知識がなければ解らないことだらけになると思いますので、ここでは比較的誰にでもわかり易い事柄についてお話しします。

まず、多くの人が心配する事柄に、その物件の過去に変死等の事故がなかったかどうか。これは気になりますよね。自殺や変死の物件であるかどうかについては、判例によると、現在の所有者の時点で起きたものは買主(または借主)へその内容を説明しなければならないことになっています。
逆に言うと、現所有者以前の事故であれば報告しなくてもいいことになっています。また、現所有者でもかなり前に起きたことではどうなのか。いやゆる時効のようなものですが、これについての明確な基準はありません。実際、私が経験した物件で、土地の売主の祖母が自殺したものがあったのですが、所有者が家の恥だということで私に話しませんでした。元々その土地には建物が昔あったのですが、既に20年前に解体され更地となっていたので私も特段確認はしませんでした。
ところが、たまたま隣地の方に挨拶に伺ったところ、その方は昔からずっとそこに住んでおり、40年前におばあちゃんが自殺した土地だよ、と私に教えてくれました。そこで私は売主に尋ねたところ、売主はその通りと認めました。それからは、その土地は相場より安い価格に変更し、問い合わせに対してきちんと過去の話をするようにしました。
たまたま場所も日当りもいい物件だったのと、40年も前のことだからということで納得して購入してくれるお客さんが見つかりましたが、これが契約後に発覚したらと思うと、今でもぞっとします。

このように不動産会社には「調査可能なことは全て調査して説明する」義務があるのです。だから私は物件の近隣にはご挨拶という形で訪問し、その物件のことを尋ねてみることにしていました。これも「調査可能」なことです。でも、意外とやっていない会社が多いんですね。

次に、これは売買の場合に非常に重要なのですが、隣地との間に越境物があるかどうかという問題です。
越境があるかどうかを確認するためには、まずきちんと境界を確認しなければなりません。通常境界石やプレートがあるのですが、ない場合はちゃんと測量して「境界の明示」をしなければならないのです。その上で隣地間に越境物があるかどうかの確認をするわけです。
ところが、見た目には境界石があり、問題なく境界線がわかるように思えても、実は境界石があるべき場所とは違った所に埋設されていることがあるのです。原因として多くあるのが、隣地の方が塀を作る時に業者が邪魔くさいといったん境界石を抜き、工事終了後にてきとーな場所に埋め直したことによるものです。一見ちゃんと境界石がきちんとあるように見えても、このような場合、実際に測ってみると図面と10㎝以上異なっていることもあるのです。特に昔の業者はいい加減でした。だから、いくら境界石があったとしても、少なくともメジャーで測ったかどうかの確認を不動産会社にするのが良いでしょう。

さて、境界がはっきりして越境物が発見された時、まず不動産会社はその状態を克明に説明しなければなりません。枝一本、上空の電線までもです。意外とこれを面倒がりやらない業者があります。たとえ発見したとしてもわざと説明しない場合があります。なぜなら、説明したとして、じゃあその越境物の処理をどうするのか、という次の問題を解決しなければならなくなるからです。
通常は越境物があった場合、越境してしまっている方にその事実を認めさせ、その撤去か塀のように即座に撤去できない場合は「同意書」によって、現状はそのままで仕方ないが、越境物を解体する時は、正常に敷地内におさめるということを約束します。

これを面倒だと思う業者があるのですね。買主に対して将来不利益になると予測されることの説明と対処よりも、穏便に取引を終了させてしまおうという考えの表れであります。

以上、今回も長くなってしまいましたが、これでも比較的わかりやすい部分についての説明をしたつもりです、法的なことで、ほとんどの一般人が気付かない「将来不利益となる」ことの説明がなされていないこともけっこうあります。だいたいその法律があることすら知らない業者もあるのですが、また長くなってしまいますので今日はここまでとします。
by jhm-in-hakodate | 2010-10-29 00:40 | 社会・経済について | Trackback | Comments(2)
Commented by New-Ma at 2010-10-31 12:37 x
明らかに業法違反とわかっていても不動産屋に逆らう、というのはなかなか労力が要ります。
長いものには巻かれろ、みたいな部分もあります。
やはり「借りている」という意識からでしょうか。
業者に逆らった場合の自分へのマイナスイメージ、その後の更新や次物件を紹介してもらう際の待遇、大家さんとの関係などを考えると言い出すのに抵抗があります。

説明すべきことはすべき時にして欲しい。
入居時の火災保険手続き(重要事項説明をしたというチェック用紙)もいい加減だったよなあ。
Commented by jhm-in-hakodate at 2010-11-02 00:06
New-Ma 様、人口が減少傾向のこの時代、賃貸物件は供給過剰になっています。どっちかが優位ということではなく、やっと対等に折衝できる時代になってきていると思います。
いい加減な業者は淘汰されます。また、物件で選ぶことが多いと思いますが、業者で選ぶ方法もあります。安心できる業者に、他社の物件を紹介してもらうことも可能ですので。