やっと提案された「困惑と指定(コンパクトシティー)」函館

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2009年9月の函館山からの眺望。

1月24日に開かれた函館市都市計画審議会の決定内容が本日の北海道新聞朝刊にて報じられた。
しかし、記事には際立った具体策も無かった。それが、記事としてまとめるための都合のためだったのか、それとも決定内容そのものが具体的でなかったのか、判断がつきかねたため、市のHPで確認しようと試みるもその報告もないので、道新の記事を基に気付いたことを述べてみたいと思う。

今回の決定事項として報じられた主な内容は以下の通りだ。
市街化区域は現状を維持し、駅前・大門・本町等の中心市街地の活性化を図る。郊外の大型商業施設を規制。滝沢町地区の市街化区域を市街化調整区域へ戻す。

これを北海道新聞社は「コンパクク化」と表現した。だが、現状維持のままでは、今後の小子化による人口減を想定しての「コンパクト化」とは言えない。なぜなら、現状の市街地がちょうど人口に適した密度を保っているわけではないからだ。
市内のあちこちには利用されずに単なる空地となっている広めの土地が数多く散見される。それに加え、人口が減少すると不要な土地が今まで以上に出現するのは誰にでもわかることだ。つまり、虫食い状態が拡がるだけでコンパクトになるわけでは決してない。
まして、郊外近くのロードサイド店舗が日常生活の主役となっている地域では、競争や人口減による売上減ともなれば引き上げていくことも考えられる。今まで「新しくて、物量が豊富で、安い」として、それを基準に生活を営んでいた住民は戸惑う。だが仕方ない。不採算店舗は閉鎖しなければ企業の存続に係る。まして、ほとんどはリースバック方式のため、違約金を支払うだけで引き払うことができる。赤字で営業継続するよりはずっとましだ。

そうなると、現状維持の政策では、全ての地域が中途半端な状態となり、どこに住んでも不便となる。まるで函館市がいくつかの村に分かれたかのような機能配分となるのだ。というより、既になっている。
コンパクトにするということは、機能を集中化することなのだ。決して行政機関のことではない。商業・金融・交通がある程度の範囲内におさまり、市民が効率的な行動を取れるような都市態形になることが、コンパクト化というものだ。
ところが、新聞によると、これを目指す理由がまた面白い。「道路維持や除雪など行政コスト増加に歯止めをかけ、都市生活を持続させる目的がある」とのことらしい。

つまり、人口が減れば税収入も減るので、支出を抑えたい、というただそれだけの理由に解釈できる。全く発想が貧困であるし、そこに市民の日常生活という実像に即した思考を感じさせない。
明治時代、函館という既存の先進的な都市があったにも拘らず、政府は札幌を北海道の中心地とするべく、様々な施策を重ねた。北海道全体の地理的関係を考えると、函館では統治に物理的な無理があるからだろう。そして、結果的にそのようになった。

函館市もそのくらいの発想の転換を図らなければ、コンパクト化は単なる理想論で終わる。今回示された案は、子供の人口が減り始めた初期に採るべき策であって、人口減少が確実になっている現在には、もう時代遅れの案としかいいようがない。今から10年から15年前に施されたものであれば画期的なものだっただろう。

今回の新聞報道の見出しだけ見た時、やっとその気になったかと期待を持って読んだが、何とも形だけのもので終わってしまいそうな公算が高い。
はぁ~とため息をつき、さて、自分の老後はどうなるのやら、と考えてしまうのであった。

ただ、滝沢地区の調整区域化を実施する前に、もし、上下水道や道路の整備が終わっていないのであれば、それを終えてから指定変更してほしい。一般の方はご存知ないかもしれないが、都市計画法では、市街化区域に指定した場合、その自治体は前記のことを実施しなければならない義務を負うのだ。
立つ鳥跡を濁さず、だ。


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by jhm-in-hakodate | 2011-01-26 01:58 | 函館の現状について | Trackback | Comments(6)
Commented by ayrton_7 at 2011-01-26 03:57
規制は、下手をすると成長の足かせになる可能性もあります。
『駅前・大門・本町等の中心市街地の活性化』に目標を置くのは正しいのでしょうか?
目標は、雇用を創出することだと思います。
Commented by jhm-in-hakodate at 2011-01-27 02:55
ayrton様、日本は法人預金額も個人預金額も世界一になっています。その反面低収入と雇用不安があるという、このアンバランスの是正が必要と思われます。たぶん、そこには成長は不必要と思われますが、いかがでしょうか?
大門・本町も函館においてのアンバランスの象徴だと思っています。
Commented by ayrton_7 at 2011-01-29 14:55
都市は、地域間で競争しています。
企業が企業間で競争しているのと同じです。
地域の競争も、その存続にかかわるのです。
そのためには、成長(それは変容かもしれません)を遂げなければならないと思います。
都市自らが変容としているのに、正しいか否かわからない構想に乗って、政策決定者が都市の成長に制約を与えることは慎重にすべきであると思うのです。
Commented by jhm-in-hakodate at 2011-01-31 00:32
ayrton様、私はそのような競争を見直す時期にそろそろ来ている気がします。人間は膨大なエネルギーと金と人の命を使って、その先に何を作るつもりなのでしょうか?
競争に勝ったという満足感の代償として地球が食い潰されるとしたら、虚しい所業に思えてくるのですが。
Commented by ayrton_7 at 2011-02-02 14:30
そもそも、市場を自由にしてきたからこそ今の街の繁栄はあるのですよ。
函館のかつての繁栄もそのような市場主義のなかで出来上がっています。
これまでの成長は許せるけれど、未来に関しては規制するというのではおかしくありませんか?
そもそも駅前や大門などの地域が寂れているのは、地代や地価が高いせいだとおもうのですが。
Commented by jhm-in-hakodate at 2011-02-03 01:14
ayrton様、自由競争経済のシステムの中での論理としては異を唱える余地はありません。
そこで質問ですが、ayrton様がその結果として行き着く函館の姿をどのように想像されていますでしょうか?街全体のバランス(街並・機能・基幹産業等の)がどのような状態になっていると思われますか?