函館の“アンタッチャブル”

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この地域を歩いていると、歩くのもおぼつかないご老人と何度もすれ違った。

本日、ハコダテ150+のスタッフ日記に、映画「海炭市叙景」のトキさん映画の中で住んでいた町を歩いたリポートを投稿した。ここでは、そのリポートの肝心な部分を少しだけ掘り下げて記してみたい。
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この町には広大な空地がある。決してアクセスが不便な場所ではない。国道5号線付近という少し古めかしさを感じさせる地帯ではあるが、ここまで廃屋が点在するだけで、寂しさ以外の何も感じさせない町になるべき位置にはない。

この地帯の建物は、皆ただ死を待っているだけだ。再生はされない。それには理由がある。この一帯の建物は借地の上に建っているからだ。借地は通常、建物を建てるための賃借権で関係が成り立っている。
つまり、建物が土地上に無くなると、賃借関係は終了し、その権利は消滅するのが通例となっているだ。また、建替えをしようとすると、借地となる対象物が変更になるために、更新料ないし新たな権利金という形でまとまった金が必要となるか、建替えを拒否される。ある意味で地主は、借地人の生活を左右できるだけの権利を有していることとなる。

たまたま、玄関先にいたご年配の女性と話をすることができた。女性は長年この地域に住んでずっと町の移り変わりを見てきたという。
そして、ある廃屋を指差し、「あの家なんか、突然いなくなったままそれっきり誰も帰ってこなかった。地代だってずっと払っていないみたいだし」と語った。「でもね、この家も自分の代で終わりだよ。娘がいるけど、娘は、お母さん、私は借地は絶対嫌だからね、と言って、土地買って家を建ててしまったからね」
つまり、その家も、主を失うと、また廃屋の仲間入りをすることになるということだ。
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函館の歴史において、ある時期までは、借地は市民にとって有効にその機能を果たしていたと想像される。昔は今のように一般市民がローンを組んで土地建物を購入することはできなかった。売買は現金でなければ成立しないことがほとんどであった。そのため、せめて土地は借地を利用してそこに建築するという手段を取るのが精一杯であったと思われる。それでも、とりあえずは「自分の家」に住むことができたのだ。また、不要となった土地や、金が必要となった土地所有者は、財産のある大地主に自分の土地を買ってもらっていた。土地を購入できる者は限られていたからだ。
そこで大地主の所有地は拡大し、借地の賃料だけでも生活が充分できるようになったと思われる。その時代は互いのニーズに充分適っていたのだったろう。

だが現代は違う。土地を所有するのは当り前になり、銀行もその資金を融資してくれる。借地は、今となっては敬遠されるものとなってしまっている。
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函館旧市街地から郊外に家を建てて移り住む者の中には、借地に住んでいた者も多く存在する。これが空洞化の原因のひとつになっている。

函館市長選・市議選が近付き、立候補予定者の方々の考えを知る機会が増えている。どの者も、西部地区や駅前・大門地区活性化・再構築を「公約」のひとつに挙げる。だが、それは函館の“アンタッチャブル”に手を付けなければ解決しない部分が大きい。

いつまで私達は、虚しい空地を眺め続けなけければならないのだろうか?


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by jhm-in-hakodate | 2011-02-21 00:35 | 函館の現状について | Trackback(1) | Comments(12)
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Tracked from Nowpie (なうぴー.. at 2011-02-21 05:37
タイトル : アンタッチャブル 最新情報 - Nowpie (なうぴー..
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Commented by 3D Harmony at 2011-02-21 01:32 x
jhmさん、お久しぶりです。今回の記事の事でちょっと質問したいのですが、その空き家となった建物所有者はなぜその建物を解体して賃貸借契約を終了させないのでしょうか。解体費用がかかるからでしょうか?そのまま空き家で放置すれば、賃料も発生し続けるから、特に相続人や特別縁故者等がいなければ契約終了させてしまった方が得のように思えるのですが。土地の有効活用という点からしても大きいですし。もし解体費用が出せないという理由なら、一般的な住居であれば、通常どのくらいの解体費用がかかるのでしょうか。また、賃貸借契約を終了させない(又はしない)他の理由があるならば教えて頂きたいのですが。
Commented at 2011-02-21 02:24
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ayrton_7 at 2011-02-21 16:31
やっぱり、大規模な地主の問題は、アンタッチャブルなのですか。
となると、函館は寂れるしか仕方なくなりますね。
日本人って、荒城の月やら、国破れて山河在りみたいな詩を好むのと同じような調子で、函館市街地の様子を眺めている観光客も多くいるようです。
喜んで良いのやら、悲しんで良いのやらわかりませんね。
Commented by jhm-in-hakodate at 2011-02-22 00:14
3D Harmony 様、お久し振りです。解体しなかった理由は私にもわかりませんが、突然いなくなったということですから、夜逃げに近いような形で去ったと推測されますが、間違っていたら当人に大変失礼でありますので、断定はできません。
借地人側はそうかもしれませんが、地主は無理に貸すつもりもないのではないかと想像します。だからこのような状態になっているのではないかと思います。
因みに、北海道の解体の相場ですが、木造でだいたい2.5万円/坪から3万円/坪が一般的であります。
Commented by jhm-in-hakodate at 2011-02-22 00:22
鍵コメント様、判断はお任せします。
函館のことを考えていくと、必ずそこに到達するはずなのですが、市民はなぜか声を出さないですね。
出さないならまだしも、出せないなら、これは・・・・。
Commented by jhm-in-hakodate at 2011-02-22 00:25
ayrton様、私がアンタッチャブルという表現をしたのは、このことを話すとき、市民は声をひそめるからです。
確かに函館が新しくなりすぎても問題であるし、今のままでも問題がある。でも、個人的には新旧の同居は可能だと思っています。
Commented by 3D Harmony at 2011-02-22 00:57 x
ご回答ありがとうございます。jhmさん、よく函館山周辺も散策してらっしゃるのでわかると思うのですが、そのように放置してある空き家、函館に結構ありますよね。確かに夜逃げなんかで突然いなくなったりする場合や借主が亡くなった後、誰も身内がいないとかもあるとは思いますが、それにしても想像以上にそういう空き家が多いなあと思うんですよね。私が今函館に住んでないから、単にそういう印象があるだけでしょうか。
 今回お返事して頂いた感じでは、解体費用も「ぼったくり」ではなさそうですし、貸主側も特に借地を押し付けてるようでもないですから、そうすると、なんで借地契約を終了してしまわないのかなあと不思議で。
 もっとも、jhmさんがおっしゃるように、建物を収去して貸し出しても、借地を敬遠する人が多いとすると、たいして土地活用にもならないのかもしれませんね。だから貸主側も放置したままなのかも。売地にすれば買い手もあるでしょうが、そうはしないんでしょうね。結局、大地主が土地を抱え込んだままという状態が、今の状態を作り出してしまってるんでしょうか。想像ですが。
Commented by 3D Harmony at 2011-02-22 01:07 x
先ほど、コメントした後で思ったのですが、大地主側もただ単に土地を抱え込んだままでは、固定資産税等で結構負担大きいですよね。貸し出さないままで賃料が入らないと負担だけ大きいような気が。どうせ借り手がいないなら少しずつでも分筆して売ってしまった方がよさそうなものですが。なんか土地の活用が不効率な状態のままでもったいないですよね。どうもなぜ今のような状態になったままなのか、いまいち合点がいかないもんで。
Commented by jhm-in-hakodate at 2011-02-22 23:59
3D Harmony 様、真摯に考えコメントしていただき、ありがとうございます。
言えることは、この程度の人口の街に、あの「金持ちしか相手にしない」と言われている野村證券の支店がずっと存在している、ということです。
また、有効活用という視点で必ずしも人は動いておりません。そのにあるのは、「人間の業」であります。
Commented by 3D Harmony at 2011-02-23 00:48 x
なるほど。やっぱりそういう部分が出て来ましたか。
放置しておいても別に構わない理由が他にちゃんとあるわけですね。はあ、抜本的な解決には難しい障害がありますねえ・・
jhmさん、ありがとうございました。
Commented by ringo at 2011-03-15 00:13 x
初めてコメントいたします。
一枚目の写真が友達の家だと思い、コメントしたくなりました。
この地区も廃墟多いですよね。
私が中学の時から景色が変わってないので15年はこのままです。
安易な考えかもしれませんが、函館に住む若い方に安く貸してどんどん自分たちでリフォームさせていけば、活気ある町に生まれ変わりそうな気がします・・・。

久々にここに住んでる同級生に連絡してみようと思います。
Commented by jhm-in-hakodate at 2011-03-16 00:56
ringo様、コメントありがとうございます。それもいいアイディアですが、この辺り一帯が借地であるため、そうそう簡単に空地が埋まらないと思いますし、また、リフォームをさせるといっても、やはり貸主責任は存在しますので、容易ではない要素はあります。
でも、そんなアイディアが少しずつ変えていくことの原動力になるかもしれません。

同級生に連絡してみてくださいね。