悲喜こもごもの元旦

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フォトフレームの中で生きていくことになった実家の愛犬。

昨日、大晦日らしく朝近くまで起きて就寝したら、やはり起床したのは昼近くなってしまった。しばらくボーとした後、なかなか目覚めない体に刺激を与えようとシャワーを浴びている最中に、実家に遊びに来ている姪から電話が来た。実家の飼い犬が死んだとの知らせだった。電話の向こうで姪が泣いていた。

昨日も実家に立ち寄り、犬と対面したが、既に歩くことができず、首を回して周囲にいる人間を見やっていた。ほとんど何も食べることができなくなっており、背骨に筋肉は付いていなかった。人間は勝手なもので、もう長くはないなとわかっていても、そんなに急に死ぬとは思えないものだ。
きっと、寝たきり犬であっても、正月はいつものメンバーで実家で食事をしたりするのが当り前と信じて疑わなかった。

だが、現実は違った。身支度を整えて実家に行き、犬の遺体を見たら、妻とともに泣いてしまった。舌が縮まったまま大きく口を開けている遺体が、そこにあった。こんな悲惨な表情の犬ではなかった、年を取っても可愛いおばあちゃん犬だったはずだ。
私はせめて口を閉じてあげようと試みたが、死後硬直のためにそれは叶わなかった。

不思議なもので、愛しきものの遺体を見ても何も怖くはない。ずっとこのまま遺体の横にいて、ずっと暮したとしても全く怖くないだろうという気持ちになった。愛しい気持ちは変わらない。

ただ死んだだけだ。それだけだ。

犬は、何らかの事情により飼主が飼うことを放棄し、ある所に預けられていたものを、母が見るに見かねて引きとってきたものだった。犬はその恩を感じたのか、いつも母の姿を追っていた。母が外出中に私が実家を訪れると、母と勘違いした犬は玄関先にスタスタと走り寄り、私だとわかるとすぐさま家の定位置に戻る。可愛くない奴、と思っても、家族みんなから愛されていた。

実家には一時期、もう一匹の犬がいた時期がある。つまり、2匹の犬が同居していたわけだが、もう一匹の犬は癲癇持ちであった。時々癲癇で暴れてあちこち怪我をすることがあった。
ある時、両親が外出から帰ってきたら、今日死んだ犬が玄関に飛んで来たことがあったそうだ。それも体中血だらけになって。何があったのかと両親が犬の後を追うと、もう一匹の犬も血だらけになって横たわっていた。いつもの癲癇で制御不能となった相棒を必死に守ったのだろう。その際に自分にも血が付いたのだろう。母はそう話した。

愛とは、そんな単純なものだ。今日亡くなった犬も、何年か前から病気がちになり、数え切れないくらい動物病院に両親が連れて行った。新車一台買えるくらいの金を使った、と父は言った。
このことを、この犬を捨てた元飼主が知ったらどう思うだろうか?命は命だ。
犬の死に顔を見て、いずれ家族の誰かが、あるいは自分がこのようになるのだ、と改めて思った。その順番はわからない。最初が妻かもしれない。私かもしれない。それとも年の順番どおりに親かもしれない。それはわからない。だが、誰が最初となっても、「その時」を迎える準備は整えておかなければならない。それまでに後悔をしないように・・・・。

実家を出ると、妻と私は行くあてもなく、市内を車を走らせた。すぐ自宅には帰りたくなかった。
夜になっやっと自宅に戻ると、携帯電話が鳴った。高校時代の同級生からだった。半月くらい前にこちらから電話したが、通じずにいたままで終わっていた友人からだった。今、函館の実家に来ているとのことだった。彼に以前電話したのは、明日行われる同窓会に出席しないかと誘うためのものだった。ちょうどいい、急遽出席しないかと誘ってみたが、彼も長いブランクに若干の抵抗もあったのだろう、出席を拒んだ。それならと、同窓会の二次会から何名かの共通の悪友を引き連れてどこかで呑もう、ということになった。彼は、それを喜んだ。

私も同窓生と顔を合わせるのは、35年ぶりだ。ひよっとしたら、その時話して、もうこの世で話すことのない者もその中にはいるかもしれない。既に何人かの同窓生は亡くなっている。そう、後悔をしてはいけないのだ。それも「準備」のひとつだ。

今日、小さな命が消え、明日、人生の大切な思い出となるであろう面々と会う。今年の元旦は命と人生を考えさせられるものになってしまった。
明日の酒は、きっと深くなるだろう。



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by jhm-in-hakodate | 2012-01-02 01:07 | その他雑感 | Trackback | Comments(0)
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