函館のライフラインの不安・・・水道

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函館は全国で2番目に給水管が整備された先進的な街である。1番最初に整備された横浜は外国人によって設計されたものであるため、日本人オンリーの設計となると、日本初の水道設備を施した歴史ある街だ。

よく蛇口をひねると水が出て当たり前と思われるが、その当たり前を日本でも早くに体験したのが函館である。だが、その水道にも不安がある。

それは、函館と言っても、合併前の旧亀田市の給水管の不安のことである。何、旧亀田市の給水管だけが不良なものが使用されているのか、と思われた方もいるかもしれない。
そのような意味ではない。昔あった赤水の源信となった金属製の給水管は影を潜め、かなり高い普及率でポリエステル管に交換ないし新設されている。そういう意味では、どこも安心だ(今のところは)問題は、その給水管を誰が所有しているかということだ、

一般の方は、ここで、「エッ?そんなの函館市に決まっているんじゃないの」と考えるだろう。ところが旧亀田市には個人が所有している管がかなり存在しているのだ。では、なぜそのようになったのか、簡単に説明しよう。

昭和40年代に入ると、旧函館市から旧亀田市に移住する者が次第に増加し始めた。それは様々な理由が考えられるが、最も考えられるのが、高度経済成長によってもたらせられた「持家指向」であろう。旧函館市は空地がなかった。あっても狭小であったり、逆に住宅地としては大きすぎたりと、ちょうどいい広さとちょうどいい地価のものがなかった。
そこで当時まだ農地が多く残っていた旧亀田市の農家が、自分の所有地を切り売りして宅地とした新しい住宅地へ家を新築する家庭が増え始めた。それが、旧函館市と合併すると急激に加速した。それは市が計画的に作案して進めたものではなかった。だから、住宅地の造成を実施するのは農家自身となった。また、急速な住宅地化に目を付けた不動産会社や建築会社も、農家から土地を買い取り、住宅地開発を行った。

道路も水道も敷設した事業主は農家や業者であった。当然、造成後のそれらの所有者はそれらとなる。ところが、道路は雨風や自動車の通行などによって傷むのが早い。また、道路を舗装していない所は水はねなどで人気がない。それらを解決するためには、道路を市に寄付して、維持管理を任せるのが手っ取り早いため、個人から市への移管は比較的順調に行われた。
ところが、道路の地中にある給水管はそんなに簡単には劣化しない。特に40年代に入ってからは、ポリ管が普及し始めたため、それを埋設してしまうと、金属管のような不安はなくなったため、道路のような維持管理の面倒さはない。

そのような条件下で、もう一つの理由が歴然とある。それは、金だ。道路を通行する者から通行料を徴収するのは、現実的には不可能だ。だが、給水管では可能だ。いわゆる水道権利金がそれに当たる。
水道権利金とは、道路地中に埋設されている本管から、宅地へ分岐させて引き込む際に管所有者に支払うものだ。理屈としては、個人が金を出して引っ張ってきたものだから、そこからの枝分かれを望むのなら金を出すのは当然だ、ということに端を発する。給水管敷設者は、この収入の魅力のために市への寄贈をせずに現在も所有し続けている。もちろん、個人管が全てそうだというわけではない。中には、水道権利金など取らないという人もいる。ただ、市への寄贈の手続きが面倒なだけだという人もいる。

ともかく、そんなわけで、旧亀田市には、私設管が多く存在する。この管理責任は所有者自身となる。ここで水道管の耐用年数が問題となる。一応、ポリ管の法定耐用年数は40年となっている。現実的には、50年以上とも半永久的とも言われている。どうしてこんなにバラバラなのか?それは、ポリ管自体の歴史が浅く、老朽化によって現実的に交換の必要性に迫られているケースが少ないからだ。だからまだ明確な耐用年数が定まっていないのだ。
つまり、ダメになってみないと実際にはわからないということだ。

そのいつになるかわからない耐用年数が、「実際に」到来した時、個人でその補修を賄うことができるであろうか?もちろん市だからといって大丈夫であるという保証はない。市よりも迅速に懇切丁寧に対応してくれる所有者もいるかもしれない。それはわからない。しかし、一般的に考えると、個人・企業の場合、その時の所有者の資力と考え方によって対応が異なってくるだろう。また、もうすでに現存していない企業もある。
給水管の交換は、単なる部品の交換とはわけが違う。道路を掘削し、新たな管を配して、宅地への接続を変え埋戻し、掘削した箇所の舗装工事をする、というけっこうな土木作業である。金はかかる。

それ以外にも懸念事項はある。個人で敷設した給水管には50㎜口径のものが多い。その管から何世帯もの住宅へ供給しなければならないのだが、現代の住宅への引き込み管は20㎜を多く採用している。つまり、新築の世帯数が増えると、水圧が下がり細い水しか出てこなくなるという不安もある。従前の引き込み管の口径は13㎜が主流であったため何とか持ち堪えていたものが、機能低下になるという可能性もあるということだ。

いたずらに不安をあおるつもりはない。だが、目先の便利さだけを享受して、最も大切なライフラインのことを見落としてもいけない。そんなことを含めた上での都市計画を「実際に居住する」市民には考えていただきたい。




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by jhm-in-hakodate | 2013-03-08 00:14 | 函館の現状について | Trackback | Comments(0)