アザミ嬢のララバイ~札幌クラブハイツ
3年前に撮影し、公開していなかった写真があった。札幌のキャバレー「札幌クラブハイツ」の写真だ。
このキャバレーは、私が40代後半に時々訪れていたところだった。この店に行くようになったのには自分なりの理由があった。
歳も40代後半となり、誰か仕事関係で個人的に接待する時、お連れする店のひとつでも持っていなければならないと思ったからだ。
最初は居酒屋か小料理屋で雑談をしながら飲み食いした後、女気のある所にご招待するのは相手が男であれば誰でも悪い気はしない。だが、下品なお店では相手に失礼にあたる。料金が高い所であれば私がもたない(笑)かと言って安過ぎてみすぼらしいお店でも失礼にあたる。
そして、もうひとつ大切なことは、接待する相手に適した女の子を付けてくれるという気が利くお店でなくてはならない。それらの条件が揃っていたのが「札幌クラブハイツ」だった。
そんな気が利くホステスさんとたまたま出会ったため、私はこの店に行くようになった。いわゆるプロのホステスさんだった。
この店にはプロのホステスさんがけっこういた。ある時、ぶらりと行ったら彼女は休みであったために、他の女性が付いた。それもなぜか二人も。その中の一人はベテランのホステスさんで、何度か同席になったことがあり、プロ中のプロのひとりだと知っていた。もう一人は若い女性だった。初心者マークを胸につけていたように記憶している。
ベテランさんとは何度か顔を合わせているが、私は一度も名刺を渡したことがなかった。基本的に今でもそうだが、このような場所では私は簡単に名刺を渡さないようにしている。当時勤めていた会社は誰でも知っているような企業だったため、そういう企業に勤めているからだ態度が変わったりするのが嫌だったからだ。
単なる一人の中年男性として遊びたかった。だから信用ができると判断するまでは、どのようなお店に行ってもすぐには名刺など渡さなかった。
しかし、そのベテランホステスさんは何度か面識があり、プロだとわかっていたので、改めて挨拶ということで名刺を渡した。すると、その名刺を見た若い女性は、「うわ、会社に電話かけてもいいですか?」と訊いてきた。
私が少し返答に迷っていると、ベテランは「こういう会社に勤めている方の職場に電話をかけてはいけませんよ」と若い女性に柔らかく注意した。さすがプロだと思った。そのようなプロが多数いたから安心して飲めたのだ。
その後、私は転勤になり、滅多にこの店には行けなくなった。
かなり久しぶりに行ったのは3年前の8月15日だった。いつも指名していた女の子はとっくに退職していた。付いてくれたホステスさんがたまたま私がよく行っていた当時から勤めていた女性だったので話が合い楽しく過ごせた。アフターですすきののジンギスカン店で一緒に食べ、その後別れた。
それが私にとっての札幌クラブハイツの最後だった。
その半年後、日本で最大級のキャバレーは43年の幕を閉じた。
すすきのにはホステスがたくさんいる。すすきのの街を歩いていると、嫌でも見かける。
そんな時、中島みゆきの「アザミ嬢のララバイ」を思い出す。
彼女はどのような目で欲望と落胆と喜びと失意ときれいさと汚さが混在しているすすきのを見ているのだろうか?
そして、偶然にも今年の同じ8月15日、私はすすきのにいた。だが、私が安心して飲みに行けるお店を見つけようとしなかった。もうそうする必要はないのだ。気に入ったバーが1軒あればそれでいい。
3年経って、やっと公開できた。
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