姿見坂と姫リンゴの樹

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姿見坂。
通説では、この坂の坂上に遊郭があり、遊んで坂を下る時、何度も遊郭の女性の姿を振り返り見たことに名の由来があるとされている。その名前自体とても趣深く情緒あるものだと思うが、姿見坂と呼ばれるようになったのはいつの頃からなのか、そもそも明治初期の地図を見ると他の坂と同様に、この坂も1本で繋がっていたわけではない。
だから、遊郭で遊んだ男たちがこの坂のどのあたりで振り返り女性を見たのか、今となっては想像もできない。
函館の歴史書を丹念に調べたら、その答がどこかにあるのかもしれないが、今はそこまで調べる時間とパワーがないため、坂上を眺めながら自分ながらに想像するしかない。

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これはバス通りあたりから下を撮影したものだが、今では上も下も生活感(と言っても、もちろん独特の雰囲気はあるが)がある西部地区では普通の坂に見える坂のひとつだ。しかし、この坂の住民は面白いことをする。写真右に写っているのが姫リンゴの樹だ。これは、ある時すぐ近くに住んでいた人がたまたま植えてここまで成長したものだ。いちおう、歩道内であり私有地ではないのだが、西部地区、特に基坂から入舟・船見町方面の住民は、このようなスペースを自分専用の小さな庭に見立てて花を植えたり樹を植えたりしている。でも、それが結果的に変に統一感のない、雑多な趣向の集合体として坂道を形成している。
さて、姫リンゴの生育具合は、

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熟している実もあるよで、これからわずかな間、姿見坂のバス通り付近は実りの秋の表情を見せるだろう。ちなみに、熟した姫リンゴを試食してみたことがあるが、正直言って決して美味しいとは言えないものだった。どちらかというとカラスが好んで食べているようだ。
それでも、実がなる樹がそこにあり、四季を感じることができるのは素晴らしいことだと思う。それも行政主導で行うのではなく、地元民がこれを植えたら街がもう少しきれいになるのでは、という思いが詰まっているからなおさらだ。

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今では新築住宅も増え、昔の名残を残すものは数少なくなってしまったが、それでも坂が持っている背景の懐の深さがあるから、現在でもどことなく昔の生活感をかろうじて感じさせるる

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この姿見坂に面して私の実家がある。今年で築83年の建物だ。これを最低100年まで使いたいと願っている。
実家の竣工当時は芸者の置屋だった。そう、ただ古いだけではないのだ。そこにはきちんとそれぞれの建物の歴史と物語がある。ガイドブックには決して載らないだろう、戦前のこの街周辺を無言で語る場所だ。

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こんな広くもなく、元町のような大きな邸宅もないこの坂には、庶民のいろいろな物語が語られずに道端でちゃんと正座をして私たちを観ている。




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by jhm-in-hakodate | 2019-09-10 00:58 | 函館の街並・建物 | Trackback | Comments(0)