今は楽観よりも悲観を、自己正常化バイアスと私たちの間違い

日本で本格的な新型コロナ感染が日常化するようになってから1年半以上が経った。
私たちは、この間多くのことを学んだはずだ。また、多くの間違いを犯した。ネットや報道などでも、様々な情報があふれ、何が正しくて何が間違っているのかの判断もつかなくなった時があった。
当初、新型コロナはただの風邪だ、という声を多く聞いた。私の周りでもそのような言葉を聞いた。新型コロナウィルスが日本に上陸し、感染が拡大し始めた頃、私はすぐさま毎日マスクを着用するようになった。その時社内では私の他1名しかマスクをしてなかった。次第に国内の感染者数が増えて来ていることに危惧を覚え、その話を近くの席の者に話すが、またか、といううんざりしたような反応だった。
その後、医療従事者などがテレビで、ウィルスは変異するたびに弱毒化するから心配ないとか、夏になって気温が上昇するとウィルスの活動も弱まり沈静化するだろうなど、「そのうち治まるさ」という空気がどこかで広がっていた。マスクをしている者に対して、マスクを信じているのかという物理的な概念ではなく信仰的な概念でマスク無用論を唱える者もいた。欧米諸国に比べて感染者数が少ない日本やアジアは体質的にこのウィルスには抵抗力があるのではないかという仮説も生まれた。そして、政府はGOTOトラベルキャンペーンを夏の第2波が来ているにも拘らず続行し続けた。
だが、こられはすべて「楽観」することによって自己の精神を防衛する自己正常化バイアスでしかなかった。すべてが逆の結果となり、私たちは大きな間違いを犯していたという認識を持つ必要に迫られた。楽観したい者は、悲観的で不安をあおる者の言葉に聞く耳を持たなかった。しかし、現実は悲観的な見解を述べていた者の通りとなった。
やっと国民全体に危機意識が拡がり、マスク着用率も高まったが、ただマスクをしていれば感染しないという自己正常化バイアスあるいは「皆しているから自分もしなければまずい」という本質から外れた思考で正しく着用していない者がいる。ウレタンマスクは透過率が高く効果的ではないという多くの情報が流れながらも、かなりの割合で着用している人を見かける。また、不織布マスクでも、きちんと折らずにただそのまま平面的に着用している者も多い。いくら不織布でも、顔面とマスクとの隙間が多ければそこからエアロゾルが入ったり漏れ出したりすることを理解していないようだ。不織布の効果を最大に出すことができるのは、鼻の形に合わせてワイヤーを折り曲げ、頬の部分に隙間を極力無くすように着用する、すなわち密閉状態を作ることよって得られる。
やっとワクチン接種が進み、後何か月先になるかわからないが、重症者数は減少に転じるだろう。しかし、ここでも危険な自己正常化バイアスは人々をコロナの脅威に陥れるかもしれない。ワクチンを打ったからもう安心だ、元の日常に戻れる。そう楽観的に思っている人には、再び厳しい現実を目の当たりにしなければならなくなるだろう。今日、あるネットニュースでアメリカのLAの新規感染者のうち、その3分の2がワクチン2回接種者だったという。おそらく、接種したからマスクをせずに「日常的」な生活や行動をしていたからではないかと思う。
ワクチン接種率トップクラスのイスラエルやイギリスの感染者数も再び上昇している。菅首相はロックダウンしてもすぐリバウンドしている国が多くあると述べているが、それはロックダウン解除後にその国民がマスクをしていなかったからだ。
私たちが考えなければならない最も重要なことは、できるだけ科学的に悲観的に日常を送ることだと思う。現実として、今まだ新型コロナの治療薬はない。無い以上私たちは注意深くウィルスに感染しないよう気を付け、また、ひょっとしたら無症状だがもう既に感染しているかもしれないという前提で、きちんとしたマスクの着用やリスクの高い行為を控えるという行動をとるしかない。
私は、新型コロナが「ただの風邪」として私たちが安心して「新たな日常」を送ることできるのは、ちょっとした症状であれば市販の「コロナ薬」の服用で対処し、それでも改善しなければ、近くの町医者を訪れて簡単に「コロナ薬」を処方してもらえることが可能になった時だと「悲観」している。それまでは私たちはマスクを外せないと考えている。
それ以外に今は何があるのだろうか?神風がどこからか吹いてきて、ウィルスを弱毒化してくれるという都合のいいことを考えるのは極めて非科学的である。ひょっとしたらそうなる可能性もあるかもしれないが、それを自信を持って主張できる科学者は誰もいないだろう。
今、世界は新型コロナウィルスの登場によって「強制的に」物事の仕組を変えさせられている。思考や意識の変革を迫られている。その中で生き残れるのは、より悲観的な結果を想像し、それを打開する新しい考え方を持つ人間であろう。なぜなら、窮状に陥っている者が這い上がろうとするパワーは、楽観的な人間の比ではないからだ。
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