賃貸物件と街並(数字に迷走する街)

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大正10年築の旧目貫商店(現北斗ビルディング)。賃貸物件としてまだまだ現役だ。

さて、利回りの話の続きだ。前回投資額とした5000万円だが、これは定期預金で言うと元本(預金額)である。そして、利回りとは元本が変動しないとしての収益割合である。つまり、土地建物そのものが何年経っても5000万円で売却できるという前提でしか成り立たない数字なのだ。
これはバブルまでは通用した。土地神話があったからだ。建物は年数が経つと価値が目減りするが、その分だけ地価が上昇すると当初の取得費(元本)は変わらない。賃料収入全てが収益となる。

ところが、バブル崩壊後地価は下落した。建物は年数とともに価値は下がる。つまり、元本がマイナスになるのだ。仮に築10年で売却することにしたとする。評価は今の土地の下落率他を勘案すると良くて3000万円くらいで売れるかどうかだ。これで元本は-2000万円減っている。その間の賃料収入は1年600万円として10年で6000万円となるが、既に元本が2000万円目減りしているため、10年間の収益は4000万円となる計算だ。これで利回りを出すと、年12%が8%にまで下がってしまう。

またまたところがだ、今までの数字は説明しやすくするために単純計算したもので、実際には税金支出・メンテナンス費用・空室損失といったマイナス要素が伴う。それらを引くと利回りはもっと下がる。この要素を加えて現実的な収益率を計算するDCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)という計算方法もあるが、空室率やメンテナンス費用の設定の仕方でいくらでも収益率が変わるので信用できるというまでには至っていない。
話を戻すが、空室率が高くなり収入が減り、収益物件としての価値も下がると元本はより減って実質的利回りは5%以下になる。それも売りたい時に売れればの話だ。実際、収益性が悪くなり所有していることに魅力を失ったオーナーが売却を考えるケースが多い。ところが、そんな収益力のない物件を買う投資家はいない。そして邪魔物を処分するかのごとく建物を解体して土地として売却する。そうなると賃貸物件をずっと所有しても結局たいして儲からなかった、という落ちになる。

そんな経過の中でオーナーが考えるのが、メンテナンスをしないこと。つまり放ったらかしで、階段等の金属部分が錆びようが、外壁の塗装が剥がれようが一切手を付けず、ただ収入だけを考える。これでみすぼらしいAP・MSの誕生だ。そんな物件に誰も高い家賃を出して入居しようとはしない。だから、家賃を下げる。その家賃で新たに入居する者には部屋や玄関を綺麗にしない人間が多い。建物やその周辺は乱雑になる。それは街並の雰囲気にも影響する。

これが、目先の金の計算だけで安易に賃貸経営を行った時の結末だ。

このような見方で街を歩いてみると、私の言っている意味がわかってもらえると思う。
その反面写真の建物のように、古くなっても現役の賃貸物件として人気があるものもある。どうしてなのか?
次回は、札幌で出会った賃貸経営の鑑と呼べる素晴しい方の話をする。
by jhm-in-hakodate | 2010-02-09 23:25 | 社会・経済について | Trackback | Comments(4)
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Commented by ayrton_7 at 2010-02-10 10:31
北斗ビルディングは、このあたりの景観を見事に引き立たせている建物ですね。
Commented by sy-f_ha-ys at 2010-02-10 20:33
私の学生時代の友人にも不動産管理に詳しい者がおりまして、ここ数日jhmさんが披露していただいている類の話をよくレクチャーされています(笑)。
そしてその友人曰く、現在のマンションの過剰供給により近い将来、国内では廃墟同然の物件が続出するのではないかと申しおりました。函館西部地区のマンションというとバブル期の投資目的をメインとして建てられたものが多いですから、私の友人が近い将来の可能性として例に挙げた事が函館では一足先に起きるのでは・・・・?、とも考えてしまいます。
数年前、某老舗レストラン横で起きた不審火をきっかけに、西部地区の空き家になった市の景観形成を受けていない古民家の解体・撤去が人知れず進んでいますが、それと同時に心配すべきが投資目的で次々と建てられた西部地区のマンション群の今後なのではないかとも思ってしまいます。
新築されたマンションの外壁を茶色にした程度で函館市は景観賞を授与するのではなく、西部地区の街並みを何十年先になっても魅力的していくという明確なガイドラインを示して欲しいものです。
Commented by jhm-in-hakodate at 2010-02-10 23:23
ayrton様、この建物が電車通や二十間坂を彩っているのは間違い事実ですね。私も何枚も写真を撮っていますし、観光客が立ち止まって写真撮影している姿を見かけます。シンプルイズベストのお手本のような建物ですね。
Commented by jhm-in-hakodate at 2010-02-10 23:31
sy-f_ha-ys様、不動産状況と街並を考えると私がくどくど書いた事柄が必然的に展望として導かれます。本日の記述で、将来を見据えた計画が長いスパンでの成功に導かれることを理解していただける方が人伝えでもいいから増えてもらえることを祈ります。それとは別の話題ですが、ホテルニューハコダテが閉館されていました。ハコダテ150+でリポートしていますので、そちらもご覧ください。